のだめカンタービレ
」のレビュー

のだめカンタービレ

二ノ宮知子

武器も、逃げ道も、ピアノだった

ネタバレ
2022年9月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大好きで何度も読んでいる漫画です。
のだめのぎゃぼーな性格に翻弄されて読者も千秋も、大好きな先輩を追いかけていく物語なのかと思いきや、最後にはその先輩すらも追い抜いてしまうという痛快な音楽スポ根です。
日本編はワイワイガヤガヤ、大学生たちの楽しいノリもありましたがパリに渡ってからは本当に長く辛い時期が続きました。
日本にいたとき、「幼稚園の先生になる」「どうして上を目指さなきゃいけないんですか?」と言っていた子が、音楽の天才である好きな人を追いかける話のように見せかけて、実は後に世界のノダメとなる天才ピアニスト野田恵の壮大な伝記のような物語でした。
千秋の母が、「のだめちゃんはあなたを連れ出してくれた天使ね」と言っていて、読者も千秋もそうだと思っていたのに、最後になって千秋が「天使は俺か」と、自分が海外で活躍するためののだめだったのではなく、のだめが大舞台に立つための自分だったのだと気付かされるシーンは、驚きもありそしてずっと主役タイプだった千秋がそうではなかったという微妙な思いもあり、すごい台詞だと思いました。
音楽をやるということが、経済的にも環境的にも精神的にも、そして才能も努力もすべて揃っていないとやっていけない過酷なものだと、ただ好きなだけではできない世界だと色々なところで描かれており、さらに「俺だって新しい譜面を前にするといつも高い壁を感じる」や「一人っきりの練習に耐えられない」と、海外にいってまで音楽をやるようなすごい人たちでさえそう思うのかというような苦しい場面があり
大舞台に立つ人たちは、なるべくしてそこに立っているんだという重厚感があります。
個人的にはラフマニノフのピアノ協奏曲や、弾き振りのシーンなど千秋先輩がピアノを弾くシーンが好きでした。
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