このレビューはネタバレを含みます▼
●ファンタジーBLは読んでうーんとなることも多いので怖いのですが、本作は作者さん買いです。いつもほっこりした読後感を下さる。本作も、サブキャラを含めた各々の心情が丁寧に描かれていて、妖精やら付喪神やら完全にファンタジー設定なのにそれが気にもならない。あらすじにもあるとおりハートフルなお話でした。
●同僚の山内が春男に対してキツく当たるのですが、春男がひとりぼっちなのは自ら人と距離をとっているから、というのもあるのかな。一人の方が楽だし…と考えてしまってる。たった一人の肉親、おばあちゃんは心配…。そこへ現れるのが“幸運を運ぶ妖精”コウ。
●コウが一生懸命に春男を磨いてやろうとしてて、春男は自分の変化を感じてだんだんコウに心惹かれていく。コウの「一生懸命さ」は「必死さ」でもあって…。人を幸せにすることがコウの存在意義で、これまで長い時間、多くの人を幸せにしようとしてきた。人間の方はいずれコウのことを忘れるのに、コウにはずっと記憶が積み重なってて、悲しい思いもしてて、今度こそ春男こそは幸せにしてやりたいと必死なのです。ホントもう…泣けてしまう。
●春男が、コウの幸せを自然と願っているのが素敵。コウは人の幸せに努めるばかりで自分の幸せを願われたことなんてないから、春男の優しさに心が動く。お互いのことを思って惹かれていく様子が良いんです。
●え、コウ妖精でしょ…?のところはファンタジー展開で乗り切る!(戸籍は?とか考えてはいけません。)そのラストの展開に山内が一役買っています。山内もなんだかんだイイ奴なんですよね。優しい気持ちになれるお話で、本当に読後感が良いです。ドールハウスにぴったりはまる小さいコウもかわいかった!数珠の付喪神たまは、女の子だと思ったら長身のオネエでした(笑)