暴れん坊本屋さん
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暴れん坊本屋さん

久世番子

笑った。「パレス・メイヂ」を描いた先生だ

2022年9月11日
笑える本屋業界物語。「あたしンち」と「和田慎二」先生の話など、作り物ではない現場の裏話のおかしさで、本屋さんで働くということへの久世先生の愛着まで窺える。全3巻を通じて久世先生の職場環境(兼業)がくっきり。
力みなく実態を伝えながら苦労話をギャグに換え、大変そうなトラブルなども多いらしいのに、それらをむしろ明るく毎日働く日常描写エピソード紹介の一端として、垣間見せてくれた。検索システムのイメージ男性がまたおかしかった。ハリポタの早朝販売、空振りおつかれさま、で驚いた。私は地元で出勤途上早めに家を出てきて立ち寄って7時台に列に並んで買ったのだが、番子先生のとこにはニーズが高くなかったのか。
スリップの話は、購入書籍にしばしば挟まれたままなのを見かけてるだけに、大切なものとの視点が意外だと感じた。確かに、入荷・売上・発注などの分析に便利そうだが。でも新刊本の証、購入前に抜かれては返品出来なくなるとは、実は結構深刻ではないか!?。
分冊百科、定期購入、帯の巨大化や中身の乏しい書籍の帯(だけ)の宣伝力、おもしろかった。本屋さんでの同僚、上司、お客との人間観察も漫画になりそうな種が豊富なのだなと感じた。書店の裏側ってこんなに面白いのか、と。。。
ホントに「パレス・メイヂ」の作者というのが驚き!
久世先生の引き出しの広さも魅力的だ。
ちょこちょこ版元との板挟みであえぐ中間的存在である本屋さんの悲哀や、曖昧な問い合わせで振り回すトンでも客、書店員としての御苦労がしのばれる。正月もないなど相当大変そうなのに、一方で本に囲まれる生活の一部として、先生が気負いなく勤続している点、先生の職場愛を見せてもらったよう。それは書店員さん達への応援歌とも受け取れ、本屋さんに入ったら、これから私はそういう眼で見るだろうなと思った。
主人公たる番子先生が人間のビジュアルをしていないところがこの作品のインパクトを見事に決定付けており、数々のエピソードの根底にあるトラブルの生々しさを絶妙に喜劇的にコーティング加工している。
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