薫りの継承【上下巻セット・単行本未収録イラスト付】
中村明日美子
このレビューはネタバレを含みます▼
この物語は、キーマンが2人いると思います。要と、黒い眼帯のおじさんです。
主人公2人とも、ギリギリのどこまで気持ちがきていたのではないかと思います。
その導火線の役割をになったのが、行く末恐ろしい幼い要でした。
もう1人黒い眼帯のおじさんは美しい少年だった兄に興味を持ち、兄弟間に流れるある種の情に気づいた。幼い竹蔵にいたずらをし、兄が竹蔵に抱いていた正体不明の想いと嫉妬心をあらわにしていったのではないでしょうか。
竹蔵はともかく、お兄さんは自分の気持ちにずっとずっと重たい蓋をしてきつく辛く竹蔵にアタり、竹蔵への想いを跳ね返すように彼を睨みつけ、そうしてやっと地に足をつけていたのではないかと思います。長い長いあいだです。
一見そうは見えなくとも、お兄さんは竹蔵のことを守る行動を所々でとっていたと思います。
やっと竹蔵と気持ちがつながった時、どんなに幸せだっただろうなぁと思います。
結局最後は一瞬叶った自分の幸せを大切にしつつも、竹蔵のこと(周りのことも)を思い身を引いたのではないかなと思うのです。本当のお兄さんは、ラストで竹蔵に向けたあのやわらかな微笑みそのままの人だったのではないかと思います。
そして大人になった要がこれからどう過ごしていくのか、人を愛すことができるのか、それはどんな人なのか、そしてどんな生き方を選ぶのかをぜひ見届けたいなと思う次第です。
どうか続きを読める日が来ますように!!
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