ダブル・バインド
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ダブル・バインド

英田サキ

重くのしかかるそれぞれのダブルバインド

ネタバレ
2022年9月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ これは凄い…かなりミステリー要素の強い作品、かつレベルが高いので、かなり読み応えがありました。ミステリーと言っても、例えば後半まで行かないと犯人像が見えてこない《後見せタイプ》と、割と早めに登場人物は出揃っていて、その中に犯人がいる《先見せタイプ》があります。そういう意味では《先見せタイプ》だったので、読み進めながら「〇〇犯人説はダミーだな」とか、「いやいや一回スルーさせて警戒を解いた後の実は.…パターンかも」「◎◎犯人説だと条件が合わないな」とか、パズルのピースを組み替えながら正解を探すような楽しさがありました。でもBL要素抜きという事は決してなく、濃厚シーンもありましたし、2組のカップルの人間的・感情的・精神的に深い所まで切り込んだ描写も素晴らしかったです。私は2組4人の中で特に葉鳥の心情の掘り下げが好きでした。ああいう破滅的で盲目的な愛情表現は「届きそうで届かない」「分かりそうで分からない」独特なもどかしがあって堪らないです。タイトルの『ダブルバインド』がそれぞれの人間関係(カップルだったり親子だったりの3組+1?)に強く関わってきて、それぞれに重々しく暗い陰を作ります。これ程タイトルと密接に繋がった作品は初めてで、事件解明までにこんなに何転もして、意味もなく無秩序に並べられたかのようなピースが最後にはカチッとはまるような…そんな感動を与えてくれる数少ない逸品だと思います。重さで言うと『エス』と同じくらいでBLというかヒューマンドラマ寄りの、ミステリー要素強めな感じでしょうか。他にも外伝と番外編があるので、そちらを読むのも楽しみです。
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