深夜食堂
」のレビュー

深夜食堂

安倍夜郎

おいしそう。

2012年2月12日
独特の作風ながら読ませる秀作です。
人読んで「深夜食堂」の店主のおやっさんとお客さん達が織り成す様々な物語。

まず読んでみて思った事は、登場するキャラクターの直接的な心理・背景描写は殆ど無いという事。
客は勿論、主人公の店主もそこまでは詳しく描かれていない。
むしろ店主は主人公というよりストーリーテラーに近く、読者に語り掛ける形で物語は淡々と進行する。

それなのに魅せる何かがある。

店主(たまに客の行動)を通して読者に限られた情報を与え、そこからこの物語に多い「空白の間」を想像させる余地を作る事により完成させる作品なのではないかと思う。
1話辺りのページ数は普通で多くはないけど、作中で語られない箇所を読者が想像する事により実際よりも長く感じさせると私は思いました。

そして食事シーン。
頼んだ料理を、ツマミにして酒を呑んだり調味料をかけたりご飯の上に乗せたりとしている事は至って普通なのに凄く美味しそう。
空腹時に読むのは止めた方がいいかも?

食事と共に作品のメインとなっている各客達のそれぞれの人生。
1話完結式の作品ですが、人情やコメディなど傾向が話により違うのも見所。
一番共感出来たのは「納豆(←大好き)」で、じーんときた=好きな話は…多いけど敢えて言うなら、サンプル版の「赤いウィンナー」・次点で「焼き海苔」。

ウィンナーの回のメインキャラである竜ちゃんと小寿々さんは他の回にも何気に少し出演していたり。
各話のメインキャラだけでなく名無しの周囲の客達も良い味を出しています。

ストーリーは面白く、1話の値段も安くてお買い得。
この様なタイプの作品がもっと見たいなあと願いながらこの評価で。
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