このレビューはネタバレを含みます▼
一応ハッピーエンドだけど、心は晴れない。
非常に読み応えがあって何度か読み返しているけれど、その度に何とも言えない切なさ、憤り、カタルシス、色々な気分を味わえるすごい作品。
シオンはいくら横暴傲慢だといっても、まだ17歳と少年と言っていい年齢なのに、運命を変えるためにあれほど凄惨な暴行を受けないといけなかったのか納得がいかない。
グレイルは、城門前でシオンが連れ去れた後、こっそり人を付けて保護することも出来たのにあえてしなかったこと。長くも生きられないと思うが少しは苦労すればいいと思っていたこと。シオンが男娼に落とされたと聞いた時は、冷やかし半分で顔を見に行ったこと、など結構最低な奴だと思った。
想像以上に悲惨なシオンの様子にさすがに捨て置けず助けるのだけど、性的暴行を受けた人に絶対言ってはいけない言葉、「どこのだれか分からない男たちに散々汚された触る気も起きない身体」など暴言を吐きシオンをさらに打ちのめし、最低な奴だと思った。
グレイルは、「肉体の痛みは暴行を受けて思い知ったはず、後は心の痛みを知ることだ」と、事あるごとにシオンの心を痛めつけてくるが、グレイルは育てなおしているつもりらしいがまったく間違っていると思う。
実際、グレイルへの贈り物をシオン本人に捨てさせることで、打ちのめされたシオンが街で不注意になり、攫われてまた性奴隷に落とされてしまう。
シオンは偽王子にされて、まともに育ててもらえず、生まれたときから被害者なのに本当によく頑張ったし、容姿だけでなく本質が美しい子だったのだと思う。
グレイルは、本物のエリュシオンの作り物っぽさ、操られていること等を一目で見抜いたのに、何故シオンの本質の美しさを見抜けなかったのか。後々、シオンを助けなかったことや、その後の暴言を悔いているけど、起こったことは無かったことに出来ないんだから、一生シオンに「愛と忠誠」を捧げ尽くしてほしいと思う。
シオンはグレイルの事を赦せるんだろうけど、私が赦せない気分。