ゴールデンカムイ
」のレビュー

ゴールデンカムイ

野田サトル

読破した時に圧倒的な達成感がありました

2022年10月26日
シーモア島で以前薦められていて、その熱さに動かされて読んだ。探検家のような、証人になったような、同時代人になったような錯覚があった。アシリパさんの食欲だとか、料理も豪快で、紹介内容はゲテモノであっても、野趣に溢れ、好奇心をそそられるところがまた驚き。植物の知識に留まらない。動物の、例えば熊、迫力や猛々しさには、二次元表現の、それも、漫画のコマというのを忘れさせて、一幅一幅に渾身の野生動物の野性を感じられるのだ。
一方で、キャラはどれも私にはついていけないものをもっている。激しくぶっ飛んでいる。
日頃は避けている私の苦手(少年・男性向け漫画要素満載)が、作品にはこれでもかこれでもかと詰め込まれている。血と食の入り交じりもさることながら、他もあれこれ激しい。
それなのに、人間達の動きには目が離せなかったり、皆が探している物の成り行きが気になり、そして、驚異的に豊富なアイヌ関連知識がどんどん自分に入ってくる。
アシリパさんのフチさん! 皆様の幸福を祈念します。
多様なパロディも挟まれていて、それでいて数奇な運命を辿る人物(ブロニスワフ・ピウスツキ氏をモデルにしたかと思わせる)をかませて、文化や歴史に対する真面目な追究も同時にあって、作品の四方八方への広がりぶりがキャラ達のストーリー内の行動半径の広さと相まって、何かとスケールがあり濃い中身。
様々な人物の過去とこだわりや、その人物形成の鍵を描写してもいて、敵味方の合従連衡の絡み合い、もつれてはほどけ、力闘の後に緊張緩和が目的なのか奇妙なほどに緩い場面があったりなど、何がそのさきに表現されるのかを既視感を持たせない。本作の勢いに、読んでいて押されてしまう。推進力を持っているのだ。
あらゆる意味で強烈な印象を残す作品。
元々雄大さのある北海道に、更なる雄大さを感じ、北方の地域への関心がどんどん高まった。数年前に柏市でアイヌ語の保存のために習得を目指す男子学生と話すことがあったが、他人事ではない気持ちにもさせられた。
体質的に合わないと思う人はいるかもしれないが、そんな私も揺さぶられたのだから、とにかく苦手シーンは飛ばし読みしても面白さはあるのだ、ということだけは強調したい。
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