ドント・クライ・マイ・ベイビー
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ドント・クライ・マイ・ベイビー

西田東

なかなかどうして

2012年4月5日
絵柄も渋いけどお話も渋い。
青年誌の文法でBLを書いたらこうなる、っていう見本のような短編集です。

絵柄が絵柄だし、登場人物も枯れかけた普通のおっさん(といっても30から40代)が中心。
全然キラキラしてない。
BLってファンタジーじゃなかったっけ?
好き嫌いがきっぱり分かれそうな作風です。

でも何だろう、不思議と可愛いんです。このおっさん達。
読んですぐ掻き立てられるようなリビドーはないけど、スルメのように後からじわじわきます。


①-② ビルの清掃員とリーマン
生真面目な性格で遊ぶ事も出来ない、割り切って結婚する事も出来ない。
取り繕う事にも焦燥を感じ始めているゲイのリーマン、藤田。
実は初めてだったというところで噴いた。可愛いじゃないか。

③-④ ↑の続編
だんだん藤田が可愛く見えてくる不思議。
「別れた後」って言葉から藤田の本心を見抜ける真人はエライ。

⑤-⑥ 遊び人のヒラとその上司
子供がほしいからとゲイなのに結婚した男、西垣。
うっかり西垣の奥さんと関係を持ち、どさくさで西垣はゲイだと知った部下の沢村。
子供がほしいといいつつ夫婦関係もなく、妻は夫はゲイだからとすっかり割り切ってしまい、浮気三昧。
設定はドロドロだけど、後味は悪くないです。
このお話、誰が一番責められるべきなんだろう。
それぞれが不義理なのに誰も憎めない。不思議。

⑦-⑧ 上司と部下
「女房の恋」というタイトルでBL漫画を連想出来る人がいるだろうか。
こちらは部下の三上がゲイで既婚者の部長、川島がノンケという前のお話とは逆のバージョン。
川島のナイスミドルっぷりがツボりました。普通のおっさんが何でこんなにカッコイイのか。
結構唐突な終わり方をするんですが、これ好きです。
「何だ?」
これいい。

⑨-⑩ 侵略の王と元王子
古代ギリシャあたりがモデルの架空の国かな?
このお話だけ他と毛色が違います。
これはあまりピンとこなかったなあ。
読み込めばまた印象が違ってくるかな?
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