このレビューはネタバレを含みます▼
最終巻の表紙でモーガンが首からさげているのが何なのか、はじめてみたときは特に気にしていなかったのだが、作者様の問いかけで読み返して、あーなるほどとなった。一目で何であるかがわかった方はいるのだろうか?
「あと一歩、そばに来て」で作者様のファンになり、こちらも購入。主人公モーガンと、彼と一緒に逃亡するリサは、結局のところ犯罪者なのでいい人たちのいい話を期待する方にはまったくおすすめできないが、私は楽しめた。本作にはいいところがいっぱいあって、何より大好きなのが、赤ちゃんの時のボズ。もうほんとうにかわいくて、コマの隅々で動いている彼のほんのささいな仕草がかわいくてたまらない。作者様の画力がストーリーの本筋には直接影響しないような些細な描写にぞんぶんに発揮されていて、一コマ一コマ見ているのがすごく楽しい。本当に細かいところまで工夫して描かれていて、読み返すと新たな発見もあったりして絵を見ているのが楽しい。本作では、「愛している」だとかいうことを、メインの人物たちが明確に言葉にすることはないし、モーガンとリサの関係の始まりは利害関係の一致であって、そこに愛情だとか友情だとかがあったわけではないけれど、モーガン、リサ、ボズがともに過ごす中で、まったくの赤の他人である三人の間に育っていくあたたかい何か、家族でも友人でも恋人でもなく、でも最終的に、何の関係もなくても一緒にいることを選択した三人の関係が、今の私には非常に居心地よく感じられた。とても心に残る作品。