このレビューはネタバレを含みます▼
綺月先生のデビュー作、95年の作品です。
ここでは登場人物の春来、園田部長、浩司の各々が抱く三者三様の愛が描かれていました。
人を想う時に溢れる気持ちは、親愛、友愛、慈愛、愛欲と本当に多種多様。ただ愛とは美しいだけでもない。
今作は春来と園田のお話ですが、私はなぜか浩司が気になりました。春来と浩司の関係は最初こそ友愛だったかもしれないけど、ある時期から共依存のようで歪な愛を感じました。
春来の失恋を通して愛の切なさや苦悩に共感もしましたが、私は春来を失った後の浩司に一抹の不安が残ります。それくらい2人はある種の相思相愛だったと思うから。
今作は誰に共感するかで見方が変わるかもしれません。そう考えると、こんな興味深い作品がデビュー作なんてやっぱり凄いなと感心しました。73p。