スロウハイツの神様
」のレビュー

スロウハイツの神様

辻村深月

テーマは「愛」

ネタバレ
2022年11月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 上巻は現代版トキワ荘に集う若者たちのそれぞれの日常や夢、人となりなどが事細かく描かれており、あまりにもつかみどころのない内容に正直退屈でした。加えて登場人物たちの誰にも共感できず、特に環の勝ち気さが鼻につき読むのに苦戦しました。がらりと印象が変わったのは下巻の途中からで、彼らそれぞれの個性を上巻でしっかり把握しておかなければ下巻の面白さはわからないと思います。下巻でようやくストーリーが動き出すわけですが、あれほどいけ好かないと思っていた環の強さや優しさに何度も泣きました。そしてコーキの深い想いにも。彼らはお互いを救いそして救われたけれど、でもそれを口にすることはこの先も決してないのでしょう。同じ優しさを持っているのだと思います。最後まで読むとあの時のあのセリフあの描写は全て伏線だったのかと気付かされます。伏線探しをするのが楽しくて、何度も前に戻って読み直してようやく上巻の面白さに気付きました。
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