黄泉からの声
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黄泉からの声

佐伯かよの

読みごたえあったな~。オカルトSFですね。

2022年11月22日
佐伯さん、昔からよく見るお名前でしたが、買っていた雑誌が違ったため、未読のものばかり。いや~、読みごたえありました!
80年の作品らしいですが、もう少し前の絵柄って感じもします。
石ノ森章太郎や萩尾望都さん系統の雰囲気で、昔はこういう絵柄よく見たな~と思うんですが、内容が深くて面白かった!
大学受験の夏期講習に通う、真紀子、淳、裕介の3人。成績の振るわない真紀子は悩んでいた。すると、ある日から、町に自死者が増えていく。そして国、そして外国でも同じ現象が・・。週単位、日単位で無差別に増えて行く。
いち早くこの事実に気がつき、何故なのか知りたい祐介は、ある法則を発見する。現象が起きている国と、起きてない国。この違いは何なのか?聞く耳を持たない警察のなかに、一人だけ同じように疑問に思っていた刑事がいて、祐介は淳も加えた3人で一緒に考える。この現象が続くなら、いずれ自分たちもそうなるかもしれない、一番怖いのは、受験を前に成績低下と親からの叱責に悩むヒロイン・真紀子がこの現象に乗っかってしまうこと。この不気味で不思議な力は、誰が司っているのかは不明だが、人間の弱さにつけこむことはわかった。どうなれば止まるかもわかった。ならば真紀子だけは守らないと、と2人は必死になる。
他に初期の短編がいくつか入っており、どれもラストが印象的。「白い時間」が特に印象に残りました。こんなラストってありなんだ?!と。「午後5時1分前…」もそう。
どの作品も「不思議な力」が鍵を握っているものの、救いがない。止めることが出来ない。しかもなぜいきなりそんな力が発生したのかの説明もなく、淡々と進み、時にはラブコメ要素がありながら、結果として残念な形で終わるため、読んでて何とも言えない気持ちになるのですが、読まずにいられませんでした。
作者の佐伯さんは数年前に他界されてますが、SF、特に異能力が関わる話を、こんなに深く描いた人だったのかと感心。他の作品も読み始めました。
絵が古いと今の人は思うかもしれませんが、なかなかどうして、太った大人や年配者など、自然に描き分けができているのがあの頃の漫画家さんです。
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