このレビューはネタバレを含みます▼
大正中期の頃、英国から帰国した糸井喜三郎は英語教師として横浜の中学に赴任します。早速、生徒と娼妓との駆け落ち事件があり、駆け落ちに手を貸した生徒•手塚真人の保護者として海軍少尉の手塚由人が現れます。話も聞かずにいきなり弟に平手打ちした手塚に、糸井は乱暴だと抗議をし口論となります。その後、糸井がこっそりと娼妓のいた置き屋に彼女の残した借金を払いに行くと、借金は既に手塚が払っていました。糸井は手塚の後を追いかけ、二人は思いがけず打ち解けて会話をし、手塚は出国する船へと帰ってゆくのでした。その後、糸井が下宿先の夫人のお供で歌舞伎座を訪れると、帰国した手塚が女学生と来ているのに鉢合わせします。歌舞伎よりも手塚達が気になる糸井に、帰り際、手塚はお土産だと美しい翡翠のタイピンを手渡すのでした。凛々しく硬派な海軍士官が、線の細い純情可憐な英語教師にだけ見せる少年の無垢さと清廉な色気がなんとも尊いです。絵柄と時代背景、キャラ、ストーリーの全てがぴたりと嵌まっていて読み応えがありました。大きな戦争へと突入する前の短い夢のような時代の恋物語です。