このレビューはネタバレを含みます▼
夏のある日、田舎の祖父母が住んでいた空き家に引き籠ろうとやって来た水沢は、リュック一つでそこに勝手に住み着いていた勅使河原と顔を合わせます。悪かったと出て行こうとする勅使河原を呼び止めた水沢は、勅使河原をそのまま住まわせて荒れた家の片付けを手伝わせることにし、体力モンスターの勅使河原が意外と人好きするタイプなことを知ります。ガスが開通して水沢が料理に腕を振うと、勅使河原は美味い美味いと完食し、その姿に水沢はほろりと涙を流すのでした。お互い訳ありと察しながらも敢えて穿鑿することはせず、家を片付けたり修理したりしながら二人は身体を重ねるようになります。働き盛りの男が二人、働かずに過ごすぽっかり浮かんだ夏休みのような日々も、やはり終わりを告げます。傷を舐め合うのではなく、それぞれが傷と向き合い乗り越えてゆくところが大人なお話でした。『3番線に電車がまいります』朝の乗り換え駅で、人懐っこい大学生の桜井ひなたと、その大学の学生課に勤める池さんとが隣り合わせます。じめっと引き摺る池さんが、ひなたの若い暴走列車に乗り換えるまでの楽しいお話です。