悪し妻かたり
」のレビュー

悪し妻かたり

大海とむ

なんと慎ましく、でかい器なのでしょう

2022年12月6日
「慎ましく」は主人公のみるめ。表向きは阿修羅の如く、悪妻を語られる蛇神の娘。その実、内情は"天女の如く菩薩の心"をもつ女性。彼女は前夫による暴虐、受けてきた苦痛や苦悩をお首にも出さず、悪評さえ利用して領民たちを密かに守る。芯の強さと賢さがカッコいい。健気。そして心を寄せはじめた新夫、殿に対する言葉遣いがなんとも「慎ましやか」で美しい。読んでいるだけで自分まで、ひそやかに凛とした美しさになれそうなw。 「でかい器」は新夫、加左吉次郎殿。聡明・寛大な殿は、周囲が悪評一辺倒の色眼鏡で彼女を見る中、みるめの真の姿に気づく。そして表面は保てても、前夫に深く深く傷つけられた"根深い怯え" に寄り添い、ときほぐしていく。気負わせず、気長に丁寧に。まー、その寄り添い方が器のでかいこと! そして繊細!色気があって誠実で大胆、男前。言うことなし。大海とむさんのお話は全部好きですが、このお話はファンタジー要素は少なめ。現実的な生活感がある中で、丁寧に心の描写をされているので、より身近に感情の変化が沁みますね✨。元々動物を描くのがうまい方ですが、より獣がおじょうずになられて😍ワンコがかわい過ぎです😺
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