曙橋三叉路白鳳喫茶室にて
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曙橋三叉路白鳳喫茶室にて

高尾滋

肯定感にあふれる世界

2022年12月7日
とても好きです。昭和初期の東京の、街並みや建造物、調度品や照明の一つにいたるまで、それはていねいに描き出され、言葉づかいや言いまわし、髪型や服装の再現もぬかりなく、うつくしくレトロな世界感に存分にひたることができます。
高尾先生は昔から、本当に絵が上手い作家さんだと思う。人物の造形や線の美しさに毎回ほれぼれします。金蓉さんは物腰やわらかな美丈夫でありながら、いざというときは一歩も引かない隠れ武闘派なところが良いですね。先生の描く人物は、いつも優しくて繊細で、深く傷ついていて。あやうい一面もかいま見せながら、ときに打ちのめされながら、それでも立ち上がるしぶとさが魅力です。なんど倒れても、劣等感にさいなまれても、自分で前を向ける、自分にとってほんとうにたいせつなものに気づける。そういう底力を、誰しもが持っていると強く信じている作家さんだと思う。
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