三千世界で君を恋う【特別版】(イラスト付き)
」のレビュー

三千世界で君を恋う【特別版】(イラスト付き)

綾ちはる/伊東七つ生

滂沱の涙

ネタバレ
2022年12月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ タイトル通り壮大な恋のお話でしたが、表紙絵のふわふわと可愛らしい雰囲気とはまるで真逆なストーリーでした。文明開花の華やかな音色を無邪気に楽しむ紅や小鬼たちが可愛いければ可愛いほど、悲しい結末を予想せずにはいられませんでした。鬼の理の中で生きるしかない運命を覆すことができるのか、どう切り開いていくのかが最大の読みどころで、二人が再び出会うために交わした約束があまりに哀しくて切なかった。涙なしには読めませんでした。有馬と再び出会えたことでまた泣き虫に戻ってしまった紅が愛しいです。安心して泣ける場所を見つけられて本当によかった。どうしても紅たちに肩入れしてしまいますが、紅が怒りの感情のまま無理やり終わらせてしまった事実を全てきれいに忘れてしまうのは、少し違うと思いました。人には人の道理があるように鬼にも鬼の道理があるのは当然で、お館さまの仕打ちは仕方のない事だったのかもしれません。運命に従ったはずのお館さまの情念が凄まじかった。残酷な描写もありましたが、今まで読んだ綾ちはる作品の中でも一番好きなお話しです。
いいねしたユーザ2人
レビューをシェアしよう!