蛇崩、交差点で
」のレビュー

蛇崩、交差点で

藤たまき

蛇崩交差点から伸びる恋と暗渠と緑道と

ネタバレ
2022年12月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高3になった龍一は、蛇崩という交差点ですれ違う同じ年ぐらいの男子に10年来の片想いをしています。裕福な家庭で私学に通う龍一は推薦で大学も決まっており、春休みのうちに何とかしてその子と接点を持とうと交差点付近をウロウロしているのでした。そんなある月の夜、転がってきたオレンジを拾うと、そこに袋いっぱいのオレンジを抱えた意中の人…円がいました。龍一は円に飲ませてもらった水道水の美味しさと円と知り合えた嬉しさでメロメロになります。家族と離れて住む龍一は週に2回、円に来てもらうようになり、募る想いを円に伝えたいと思うようになるのでした。見るからにワケありそうな円と何不自由なく育った龍一が、蛇崩という名の由来だろう暗渠と、その上の緑道とに象徴されています。暗渠の下の静かな流れが時に暴れ氾濫するように、いつもは物静かな円の激昂と、なすすべを持たない龍一、二人の若さが切ないです。高3の春から夏への夢のような時間と突然の別れ、その後の静かに降り積もる日々、エロはほぼ無く、若干厨二っぽい空気感の純愛物語でした。
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