このレビューはネタバレを含みます▼
作者さん買いで積ん読から。ヤクザの元組員の窪田×ランのお話で、表題作のみ全6話+描き下ろしで合計233ページ。7年前の組同士の抗争で記憶を失ってしまった栖原組のランが、かつて親しくしていたという元組員の窪田に接触して…というストーリー。既刊の陥没乳首、男の娘、魔王ものとか、そこに来てのヤクザハードボイルドBL。作者さんのネタの引き出しが多くて感嘆ものです!既刊は明るくて軽めな作品が多い印象でしたが、この作品はずっしり重厚でした。お互い拠り所を求めていた二人が偶然出会ってお話が動き出す。記憶は全くないのに、全身で覚えているってどういうことでしょう。初めて死ぬのが怖いと思ったのに、そう思わせてくれた組と窪田さんを裏切らないと自分が死んでしまうかもしれない…。ただ一緒にいたいだけなのに、重くて大きいジレンマに揺れるランの心情がとても丁寧に描かれています。誰かを庇って7年も服役するとか、誰かのために死を覚悟できるとか、どんなに深い愛情なんだろうと思うと胸が苦しくなりました。ヤクザものということで、若干流血シーンもあります。若頭の手代木さんも周りの人たちも厳ついですが、人情味があって懐が深いのも良かったです。ちなみに、若い時のヒゲなし窪田さんが男前すぎて変な声が出ました。悪役縣にちゃんと天誅が下ったのもすっきりです。