NANA―ナナ―
」のレビュー

NANA―ナナ―

矢沢あい

誰といることを選ぶか

ネタバレ
2022年12月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 連載時も読んでいましたが、久しぶりにまるっと1から最後まで読み直しました。
この人間くささが堪らないです。番外編も込み込みで全ての感情が繋がっていく感じ。
ストーリー的には冒頭でちょっと登場しただけの浅野さんのことを奈々としては案外時間が経っても思い入れが強そうな描写があったり、タクミと結婚が決まった後になってからショージはいつから浮気してたのか?という話に触れて「ずっと前からだったわけではなく、2週間か」と納得したり、物語的にはもうそのことは終わった話じゃない?と思えることも丁寧に拾われていて、当事者のモノローグだけでなく外側からキャラクターの感情を浮き彫りにさせる手法がすごくグッときました。
過去になってしまったことも何を知っているかによってそれをどう捉えるかというのが変わってきます。
奈々以外のエピソードにも言えることですが周りのみんな良かれと思って黙っていたのだとしても、やはり真実を知らないと妄想が広がっておかしな方へ捻れてしまうのだと思いました。
昔、淳ちゃんは大人だなぁと思っていましたが、今読んでみるとあちこちで失言をしていると感じました。京介はそれもわかっていて時々嗜めていたのだと思いますが、淳子自身も言われた奈々もハタチの頃は全てが正論だと思ってしまうのも仕方のないこととも思えます。
ビリヤードのように、誰かが何かを決めるとそれに影響され人間関係が変わっていくのがあちこちで見られますが、一度動いた状況は元に戻せません。
誰かの為だったり自分の心を守る為だったり、理由は様々ですが人は誰かといることを選びます。
その時、プライドのために選んだ結果変わってしまう人間関係を事前に想像することは難しく、何が起こっても受け入れられる保証はありません。
みんながナナとレンの恋物語を夢見ていますが、そのナナでさえ本当はヤスの手を取りたがっていました。
好きな人は一人ではないし、置かれた状況の中で人は生きていくという生々しさがこの作品にはあり、未完だろうと今後も語り継がれて欲しい名作です。
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