氷の城壁【タテヨミ】
」のレビュー

氷の城壁【タテヨミ】

阿賀沢紅茶

見せたくない部分まで描き切っている

ネタバレ
2022年12月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ これを読んだ人は、未読の人に「いいから読んで」と勧めたくなる症状にみまわれます。
作者様は別作品も含めて、スクールカーストのすべての階層の人の心情を知っています。
どうして?と聞きたいくらい。
最初の頃はどうなのかなと言う気持ちになるキャラクターも、読んでいくにつれて全員が素敵な一面を持っている人物だと思うようになります。
強烈に驚いたのは、ミナトとこゆんが付き合い始めてまだ慣れないころのハグのシーンで、ハグされた側のこゆんの手が自分とミナトの間で折り畳まれ、変なポーズになってしまうところです。
普通ああいうシーンはハグしたという事実がより綺麗に見えるように描写され、幸福感しかないように描かれるものかと思いますがそこで実はこゆんの方はこんなふうに「手が変になってる!」と恥ずかしがって考えごとをしているなんて。
これは結構経験者いるのではないかと思いますが、だからこそ読者に共感性羞恥と、よりリアルなデート現場を想像させ、ただ綺麗なだけのロマンティックシーンを遠巻きに眺めるのではなく気持ち的には一緒に参加させられてしまったかのような不思議な体験ができます。
この先生はいつもこうで、こうしたちょっと可愛くないエピソードを入れることで物語を他人事にさせないテクニックが素晴らしいと思います。
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