このレビューはネタバレを含みます▼
芹澤先生の作品は本当にストーリーがきちんと練られていて、設定も絵も細やかで丁寧だなあと改めて溜め息が出てしまう作品でした。
人だけでなく、北海道の銀世界とそこに生きる動物達の表現も生き生きとしていて、映画のように世界に引き込まれました。主役二人の心情にきちんとスポットが当てられており、雪深い冬の間に少しずつ心が通い合っていく様子が丁寧に描かれていて、何度読み返しても心が暖かく幸せな気持ちになります。
写真というキーアイテムを物凄く活かしていて、後半で成美さんが春樹くんに見せる写真が、タンチョウの求愛の写真だったり(成美さんは意図した訳ではないと思いますが)、最後の一枚にはそれこそ想いを込められたものが待っていたり、芹澤先生の物語の作り込みが本当に素敵でした。
そして先生ご自身のカメラワークも素晴らしいです。切り取る箇所や表情を映す場面、コマ割etc、一言で言えませんが、それらが映画を観ているような感覚要因の1つかもしれません。
性描写を重視する方には物足りないかもしれませんが、本編にもある通り、性別では括れない生きとし生けるものとしての「惹かれ合う何か」を描いた秀逸作品だと思います。