このレビューはネタバレを含みます▼
シェアハウスで暮らす男5人。実家の旅館を改修してシェアハウスにした大悟と成文の兄弟と、ゲイの澄春、泰生、恋愛感情のない十真。澄春は高校から14年、ずっと大悟に片想い。ノンケの大悟に告る勇気もなく、でも自分を大切に扱ってくれる大悟への気持ちは全く変わらない。そんな澄春の片想いを軸に、ストーリーが展開していくのですが、ただのシェアハウスものではありません。アカシックレコードやら、変身するお茶、透視メガネ、記憶を消す万年筆…不思議グッズが出てきます。でもギャグではなく、澄春の揺れ動く恋心を、不思議なアレコレが、背中押したり惑わせたり。グッズがそうさせるのではなく、澄春がそれらを使って、大悟への恋心と対峙してるんです。あくまで、澄春と大悟のラブストーリーで、不思議な物語ではありません。不思議なことがいろいろ起こりますが、ちょっとしたスパイスのようなもの。14年、澄春の恋心に気が付かなかった鈍感な大悟が、思いがけずの告白から、気持ちが一気に揺れていくのが、きゅんとします。物語がギアを変えるところです。元々、澄は大切な存在だったんでしょう。澄春の長年の片想いの相手が自分だとは思わず、その相手に憎悪みたいな感情を見せたので。そのシーン、大好きです。鈍いけど、おおらかで安心感のある大悟。澄春は間違いなく、幸せな最後を迎えるでしょう。二人はキス止まりです。他の住人や、二人のその後とか見てみたい気もしますが、これはこれで、完結で良いなと思います。絵津鼓先生の、雰囲気やニュアンスで綴られた、穏やかで優しいBLです。