逢縁カタルシス
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逢縁カタルシス

大島かもめ

若旦那の強さが良かった

ネタバレ
2023年1月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 主従…下剋上?…、軽〜く読み始めたら、鉛のようなものが残りました。感情の機微を描くのが上手な作家さんだと思っていて、読後が心地よいので、大島先生の作品は何冊か読んでます。これまでのつもりで読んだら、簡単ではなかった。ストーリーが、という事ではなく、時代背景のせい。たぶん、リアルでこんな事はあっただろうと想像出来るので、余計に辛く感じるのでしょう。大正時代、明るくて懐の深い、薬種商の若旦那の竜次と、運転手として雇われた近藤。二人が立場を超えてBLするストーリーなんですが、竜次は店の息子ではありません。元々丁稚から奉公していて、大旦那の一人娘の婿になる予定が、娘が他の奉公人と駆け落ちし、竜次が若旦那として残ってます。それが分かると、他の奉公人からなんとなく軽んじられてる雰囲気が、納得出来ました。そして、竜次が若旦那となったのは、一人娘の不義への贖罪というより、大旦那が竜次に色情を抱いていたからからなのでしょう。そういう関係だと大旦那は思い込んでいる。生きるために、全て飲み込んできた竜次の気持ちを、全く分かっていない、そこが気持ち悪くて。今とは全く違う、雇用関係や時代背景が生々しいのです。一人娘の駆け落ちの顛末も、胸が痛むものがありました。でも、決して、暗い話ではないです。竜次はやっぱりポジティブで明るいし、ワンコ攻めの近藤も頑張ってる。二人の未来は明るそう、と感じられます。時代背景の暗い部分が描かれてていたのが、自分には残っただけで、大島先生らしい明るい話です。
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