囚人の島~白い世界に君がいた~
」のレビュー

囚人の島~白い世界に君がいた~

いもあん

何もない場所で交わったふたり

ネタバレ
2023年1月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●総73P。『雨降らしの森』と同じ“迷い人”シリーズとのこと。そちらは拝読していないのですが、読んでいれば設定や世界観がもっとスッと入ってくるのかも。本作の中では、“迷い人”がなぜ迷い込んでくるのか、なぜ戻ることができるのか、そのきっかけは何なのか、そもそも“ここ”はどこでどうなっているのか…などの説明は全くされていません。(ほんの少し作者さんの補足がある程度)
●それでも、だからこそ、“ここ”で出会った二人は外的な何かに影響されることなく、お互いの本質のみで関わりあえたのかな…と思います。二人の会話と触れ合いしかない。これはBLなのかな…人と人、心と心の交わり、という感じ。
●唯一BLらしい直接描写はキスのみですが、そのシーンはとても印象的でした。全くの“無”のような状態になっていた囚人が、人を愛すること、愛した人の幸せを願うこと、そういう温かい気持ちを実感する瞬間。
●囚人は、何人かの“迷い人”と出会っては見送っていたようですが、このような気持ちにさせてくれたのは今回の“迷い人”だけだったのかな…。必ず別れが来ると分かっていながら、「出会えてよかった」と言える交わり。それは幸せなことなんだろうか。
●囚人のこの先を思うと…何もない中を歩き、あの人が残した印を見つけたとき、囚人はどんな気持ちになるんだろう…。もし次の“迷い人”と出会ったなら、囚人のその人への接し方は今までと違うものになっているのだろうな…とも感じます。
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