豚の復讐
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豚の復讐

黒田高祥/仁藤砂雨

人の心を持った異種族たちの熱き聖戦

ネタバレ
2023年1月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 復讐、因果応報など生ぬるい。
このクラスメートどもがやっていることは正に悪魔の所業。
大人しく暮らしていたオーク、何の害意もないエルフ、ドワーフ、
そして無抵抗な住民へ対する虐殺、奴隷化、暴力支配。
世界を守るために与えられたはずのスキルによって勘違いの果てに
理性を失い、暴虐の限りを尽くし、弱者を傷つけ嘲笑う。

過ぎたる力は身を滅ぼすと言うが、
高校生とは言え欲に憑りつかれた人間は男女を問わず、
こうも醜く堕ちるものかと失望せざるを得ない。
現世における悪行を異世界でも躊躇なく働き、
その身勝手な快楽によって時おり見せる醜く歪んだ卑しい表情は、
もはや人間のものではない。言うなればバケモノ、動物以下であり、
このような卑劣愚劣極まりないクラスメートどもに比べれば、
ゴブリンでさえまともに見える程である。

こんな性根の腐った外道どもに同情の余地などなく、
完膚なきまでに報復された果てに惨めな姿を晒され、
撃破されたところで当然の報い、以外の感情はない。
加えて今際に飛び出す言葉と言えば、その場逃れの命乞い、
自己保身による言い訳、責任転嫁に終始し、
挙句の果てには逆恨みの邪念を抱き、より醜くなる者さえいる。
男気のある男子も、品位を備える女子もいない。
誰一人として自身の行いを後悔し、主人公や妹に詫びる者はなく、救いようがない。

そんな腐りきったクラスメートどもに現世で耐えがたい恥辱屈辱を受け、
唯一の存在であった妹までも奪われ、一度は人生を諦めながらも、
異世界で出会えた異種族の仲間たちとともに力を合わせ、何度も傷つきながら
前に進んでいく展開は熱く、涙が溢れて来る。
そして言葉が通じなくとも、共に泣き、怒り、安住の地を何度奪われようとも立ち上がり、
異世界を守ろうとする様は種族こそ違えど、間違いなく人間の心意気である。

鏖と言うと聞こえが悪いが、カレリアの愛した世界を守るためにも、
このクラスメートどもを生かしておくわけにはいかない、と言った方が正しい。
武一行には是非、奮闘してもらいたい。
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