いつくしむ、さを鹿の声【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】
春之
このレビューはネタバレを含みます▼
表紙の美しい絵と、試し読みの剣道着姿の和風男子2人。さらにタイトルも雅な感じで「鹿」が入っているのに惹かれました。
関西で鹿といえば奈良公園。
なんと言っても国の天然記念物です。
奈良公園だけでなく、普通に商店街も歩くし、学校にも入ってくるし、人に馴染んでて愛着が湧きます。まあ紙バック持ってたら、雄鹿に食べられたり、鹿せんべいを持っていたら「よこせ!」ってめちゃめちゃ鹿に寄ってこられたりと、ヤンチャなとこもあるけど。奈良県民の鉄板ネタと言えば「奈良の人は早起きするのはナゼでしょう?」クイズ。これも鹿絡みですしね。
えーと、なんの話をしてたんでしたっけ?
とにかく、鹿ラバーとして、この2人に鹿がどう絡んでくるのか?タイトルに鹿が入っているのは何かの伏線に違いない!と思って読み始めたのです。
なになに、元高校の剣道部の副主将だった黒髪メガネ男子の冬月(ふゆつき)が、卒業から8年ぶりに相方の主将だった陽介に再会するんだと?冬月がクールそうなのに、陽介のことになると、顔が真っ赤って可愛いわぁ。ところが、陽介は名前どおり陽キャだったのに、なぜか疎遠だっただけでなく、秘密めいて陰がある感じになってると。が、再会がきっかけで、また会うようになり、陽介からサバゲーに誘われる冬月(ん、サバゲーに鹿が出てくるのかな?)と、サバゲーを知らないので期待したけど、鹿、現れず。
丁寧に、お互いが過去を振り返り、相方を大切に思ってきたことを思い出しながら、冬月が酔っ払ってハプニングイベントが起き、周りの人間の手助けもあって、お互いが大切な存在であることの意味が友情なのか敬愛なのかを考える過程がじっくりと丁寧に描かれて読み応えタップリ。
が、鹿ラバーとしては、舞台も奈良でなく、鹿絡みっぽいキャラが関西弁の吉野君1人だけで、読んでも読んでも鹿が出てこない。次第に「で、鹿は?」と思っているうちに本編が終わってしまい「えぇぇ、鹿はぁ(涙)」と思っていたら、あらまぁ、書き下ろしで夜の営みに励む陽介を雄鹿に例える吉野君の奈良ギャグに鹿登場!そこか!そこなのか!だからあのタイトルなのか!と大興奮。いやあ、それを雅な言葉を使って表すとは。知的でエッチで最高ですっ!
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