幾千の夜
」のレビュー

幾千の夜

木下けい子

実は宙が一番大人かもしれない

ネタバレ
2023年2月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 家が隣同士の幼馴染みである哲弥と宙。父子家庭で厳しい父親とうまくいっていない宙が頼れるのは年上の哲弥だけ。哲弥にとっても宙は大事な存在だったけれど、いつしかそこに欲が混じり、純粋に自分を慕う宙から逃げるように進学で家を出る哲弥。

宙は勉強ができなくて、どこか放っておけない危うさがあり、友人が心配していたような危ない目にも遭い、哲弥が手放したくないと思ってしまうのも分かる気がする。

でも、哲弥には本当にガッカリした。二人が幼馴染みなこと、男同士なこと、まだ学生の哲弥が乗り越えるには高すぎる壁があったのは充分理解できる。理解はできるけれど、自分の本心を誤魔化して彼女を作り、宙が手に入るかもとなったら彼女を捨て、自立しようとする宙を囲いこむようなことをし、逃げ出した宙を追いかけもしない。

数年後に再会したときも頑張って動いたのは宙で、哲弥は元カノを振り回して傷付けただけ。彼女の方も哲弥の本心に薄々気付いていながら目を瞑り、核心に迫ることを避けていた結果だから自業自得感は否めない。とは言え、哲弥が不誠実で自分勝手なのは確かで、大人になった宙に哲弥以外にも目を向けてみたら? と言ってみたくなる。


作者さんの作品が好きでこの作品も作者買いしたけれど、多分、もう二度と読まないと思う。
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