櫻狩り
」のレビュー

櫻狩り

渡瀬悠宇

入魂の芸術

2012年10月24日
もしも
私が作家や漫画家を
目指していたとしたら

この作品に出逢った事で
諦めたに違いありません。

……凄いです。

皆様のレビューも
とても参考になりました
m(_ _)m


讃辞に
漱石、太宰、横溝、
長野まゆみ氏の
御名前が挙がっていますが

江戸川乱歩を
お忘れでは?😃

↑少年探偵団の
明るい乱歩ではなく

陰獣、屋根裏、パノラマや

そして孤島の鬼の。


第二次世界大戦以前、
華族の豪奢なお屋敷

蔵、秘密、アルビノ、櫻。

日本人の昏い湿った感性に
訴えかけて来る舞台で

陰惨な事件が続いて行き、

そして
魂を振り絞るような
壮絶な恋。


表現の技術に心底
感嘆しました。

無駄なコマなど
ただの一つもありません。

読了後、また読み直すと
こんな所から既に伏線が!
と驚く事ばかりです。

人物の顔が
非常にシンプルな
装飾の少ない線で描かれ

なのに
躊躇い、憂い、傷心、愛…
ここまで感情を表すとは…
底知れない画力です。


極端に擬音を排除した
情交のシーンは
余りに淫靡で

エロティシズムって
こういう事を言うんだ!と
教えてくれました。

また全編に渡って
場面転換が非常に巧みで
稀代のストーリーテラーの
凝った映画のようで。

重い余韻を残す形で
終焉を迎える物語には

魂を抜かれました。


先に挙がった作家諸先生が
お好きな方、

あなたに読まれるのを
この作品が待っています。

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