つごもりの通り道
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つごもりの通り道

日野雄飛

未散くんに肩入れしちゃったもので

ネタバレ
2023年2月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 上164、下165ページ。
大正ぐらいのが舞台の、怪異絡みミステリー仕立ての話。
記憶が失われた警官の巌、その従兄弟の未散、そして未散の働くよろず屋の主つごもり。いくつかの事件を解決していく内に、つごもりの正体や巌が記憶を失う前に巻き込まれた事件が明らかになって行き、事件の絡み方も人物の絡み方もとても良く練られていて面白かったです。つごもりの、人ではない妖らしさもとても良かった。未散が袂にお菓子を入れているのが地味に好きです。巌と未散の子供の頃の話(上巻)なんか、山の怪異の不気味さに二人の禁断の秘密と花の名前というロマンチックさが合わさって、すっごく良いです。……ほんと、すごく良かったんですよ……最終話前までは。
〜〜〜以下ラストに関して愚痴ってるので注意〜〜〜
最終話、大きくなりすぎて藍次という器に戻れなくなったつごもり、骨董品という器に分散して入ることで、欠けた状態ながら藍次の身体に戻ります。そこは良いんです。巌を気に入って、巌とつながった身体を捨てたくないというわずかな執着が出る、つごもり側の気持ちはわかるし良いと思うんですが。未散に肩入れしてしまったので、巌にすっごい腹が立つんですね。
ここまでさせておいて綺麗さっぱり忘れるなんて、って巌がつごもりに対して思ってるシーンで、「そのモノローグ、そっくりそのままオマエに叩き付けてやるよ!」ってなっちゃいまして。未散にあそこまでさせておいて綺麗さっぱり忘れていて挙句「弟にしか思えない」って振ったんだろお前……あの姿あの中身のつごもりが良いって言ってたくせに、記憶のないつごもりに「恋人だ」って言ってすぐエロに持ち込んだのも気に喰わないよお前……鱗も出なくなって中身もなんか変わったつごもりで良いのかお前……?
この作者さん、恋愛感情が希薄だなと思うところがあって、そこが怪異としてのつごもりの描き方では良い方に出て、巌とつごもりのBLとしての最終話では悪い方に出たと思います。
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