オリンピア
」のレビュー

オリンピア

丸木戸マキ

ドールの最後の役目とは…

2023年2月7日
夢か幻か、儚い24ページの物語でした。ラブドール 半朱を通して亡き父の失踪した空白の歳月を知り人間性を知り、幼い頃の記憶を呼び起こされる。マーラーの曲が繋ぐ、あの微笑みを向けられた日の父との記憶を。おでこを突き合わせて寝物語を紡いだり、キッスに頬を寄せたり、体重を預けてソファで一緒に寛ぐ2人は父と子の姿に重なって見えて、失われた時間が悔やまれる。人間嫌いで変わり者と言われた父の愛情深さに触れ、それは半朱越しに自分に向けられたものだったと知った礼央はきっと父に赦しを与えただろう。ドールに魂を吹き込む程の愛情を肌で感じたのだから… 最後に半朱が「抱いてみないか」と持ち掛けたのはドールとしての本懐を遂げたいと言う思いと、昭仁の面影が残る礼央に抱かれて幻でも彼の温もりを感じたかったのではないか。半朱は昭仁の為のドールだったのだから… 一人残された礼央の眼差しが語るものは… 受け入れ、慈しみ、祈り でしょうか。とても切なくて余韻の残る幕の下ろし方でした。聡明で表情豊かでおしゃべりな半朱だけれど、身体は人形のままで身動きが出来なかったのが何とも物悲しく感じました。 どうか半朱の魂が亡き主の元へ行けます様に… 丁寧な作画と大人のお伽噺の様なストーリーでページ数以上の充実感がありました。元々 お安いのに値引き&クーポンで雀の涙ほどのポイントで購入させて頂きました。ありがとうございます。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!