有賀リエ連作集 工場夜景
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有賀リエ連作集 工場夜景

有賀リエ

何ともいえない作品

2023年2月9日
目立つキャラの主人公でもなく、どこにでもいそうな二人であり、派手な描写があるわけでもありません。
また、セリフが極端に多いわけでもないのに、どんどん話のなかに引き込まれていきます。
8年もの月日を一冊でまとめあげているところが、作者さんのテクニックの素晴らしいところでしょう。
内容はただ重苦しいだけでなく、少年少女達の学生らしさも上手く表現されています。
使っているセリフが、よくある感動的な本に使用されている歯が浮くような表現は、ほぼ使用されず、私達が日常で使っているような会話で構成されているので、余計にリアルに伝わってきます。
また、学校や家族、会社などの社会の闇が見えてきます。
主人公達が勤務する会社の上司の会話に、とても同意させられるのですが、日本によくある体質の企業ではこうはいかないでしょう。
きっと外資系の企業を連想させるところも、これからの日本の在り方を考えさせられる話でもあります。
涙なくしては読めません。
犯罪において、歯車が狂ってしまう様を実にリアルに書き上げた作品です。
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