蟷螂の檻
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蟷螂の檻

彩景でりこ

共依存

2023年2月10日
まさにこの2人は、カマキリとハリガネムシのような関係性だった。自分で生きているように見えて、寄生された瞬間からすでに操られている。
執着愛に至っては典彦よりすごい作品を知っているが、サイコパスという点で典彦レベルはなかなかいないのでは。歪んだ愛ゆえか、愛が深すぎるゆえか、愛しい人を自分の好みに仕立て上げ、自分以外との生殖機能を奪い、精神をじわじわ壊していき、生かしながらも内臓から生存に必要な要素を貪り食っていく様は鬼気迫るものがある。育郎はもはや生きた屍のようで、生存する唯一の方法は典彦の存在のみという具合になっていて、まさに宿主と寄生虫そのもの。
読者的には普通なら恐ろしくて腹立たしくなるような人物なのだが、持ち合わせた色気のある見た目や、品や教養のある立ち居振る舞いに艶がありなぜか目が離せないのが典彦の魅力で、育郎含め周囲の人が心を奪われるのがわかる。
育郎がただただ不憫でならない場面も多く、さち子や蘭蔵、飯田が救えたらよかったけれど、もう外野がどうこうできる次元ではなくなっていて、共依存の恐ろしさを感じる。
蘭蔵が、ほんと可愛らしいんですよね・・・父親があんなじゃなければ、蘭蔵と育郎はと思うとやるせない。
全ての人物にとって、メリバな結末だったように思う。
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