当分他のBLは読めない。衝撃的すぎて…。





2023年2月12日
BLのくくりには収まりきらない作品です。確かに男同士の行為はありますが、肉欲とエゴのために貪り合っているようにしか見えず、エロくはあってもロマンチックには程遠い。行為中のまなざしの描写ひとつとっても、互いに相手をどう陥れるかを考えているのでは?と勘ぐってしまい、BLのLが本当にあるのかが最後まで読めない。893とそれを取り締まるべき警察が、社会の最底辺で自己の利益だけを求めて絡み合い騙し合い殺し合う、人間の裏側だけを見せつけてくる作品です。見事なほど善人が出てこない。かと言って「ピカレスク」と言うほど洗練されてはおらず、その鈍重さがかえって心にグサグサと突き刺さってきます。作画は、青年漫画の領域ではないかと思うほどドギツい。実話が基ということもあり警察内部の腐食の構造がリアルなのに加え、リミッターが外れてしまった人間の恐ろしさがハンパない。ここに書いたら弾かれてしまう漢字犯罪の具体例オンパレードです。差別問題や、ソシオパス・サイコパスなどの反社会性人格障害で社会から弾かれる悲惨さも描かれます。自分を「異常者」と自覚し、必死に通常の社会にしがみつこうとするも堕ちていく主人公の鬼気迫る描写に、作者様の感性と力量の凄さを感じました。脱稿後の作者様の心身の健康を心配してしまったくらいです。それだけに、番外編のすっ飛んだ明るさが逆に恐ろしかった。これは現実かそれとも夢幻か…?以上のように激烈すぎて読む人を選ぶ作品です。BLが主たるテーマなのではなく、この物語を述べる上で必要なピースのひとつにBLの要素があるにすぎない、と捉えた方がいいのかもしれません。しかしもし読めたのなら、読んだ方の心に強い爪跡を残す作品であることは確かです。

いいねしたユーザ6人