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いくえみ綾

大人になって読むと違う意味が見えてくる

ネタバレ
2023年2月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 中学生の頃読んで衝撃を受けた思い出の作品。若いいくえみさんの才能が溢れている、初期の傑作。ご自身のキャリアと共に上手にファン年齢層をシフトなさっていて今では全く違うジャンルではあるが未だに活躍なさっている作家さん、凄いです。
少女漫画大好きの夢見る昭和の10代の少女たちにはこのアンハッピーエンドは悲しすぎたと思う。私も当時ラストにどこか納得できず、チエがかわいそう、マサオと結ばれる道はないのかな、続編が欲しい、などと長いこと思ってました。でもいい大人になって数十年ぶりに読み返した時、ああ私は子どもだったんだな、マサオがチエを選ぶわけがない、とストンと腑に落ちました。それはチエが考えるように「自分だけはマサオに選ばれない」=彼にとって自分は永遠に妹でしかなく恋愛対象にならない、と言うことだけではないんですよね。婚約者を喪ったマサオの深い悲しみに寄り添えない、寄り添うことよりも自分の恋を押し通したい気持ちが勝る、そんなチエの傲慢さ幼稚さを、チエ自身が子ども過ぎて理解できていない。だからマサオは敢えて、チエの別れ際の捨て台詞を否定しなかった。
チエはあの後、親元を離れマサオ達のいない街で1人で生活して、大人に成長していったでしょうか。
やっぱり続編が読んでみたいなあ。大人になった自分が大人になったチエを見たいなあと、ちょっぴり思ってしまいました。
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