主人公のお人好しさが暖かかったです

197ページ。
幽霊話は大好きながら、元恋人の幽霊が出てくるお話は元恋人に同情しがちでモヤっとしちゃうので避け気味ですが、こちらはどうしても気になったので。作者買いです。
藤丸と元恋人の霊鉄人、そして新しい恋人の真湖との話。祖父の葬儀がきっかけで霊が見えるようになった真湖が、鉄人と対立しつつもきちんと相手して友人っぽくなっているのが良かったです。ストーリーとしては、ブンタン(猫)の霊とか、ストーカーとか、要素が活かしきれていない感はあります。が、それを上回るなんか好きな雰囲気があるんですよね、この作者さん。
コミカルなシーンも交えつつ、生者と死者の思いとか、ゆっくり前に進んでいく感じとか、相手との向き合い方が良かったです。
元恋人の方に同情しがち問題は、大丈夫でした。藤丸と鉄人、幼馴染でなんとなく惰性でくっついてて、遅かれ早かれ恋人としては別れてそうだなって思ったので。読後にモヤっとが残らない幽霊ものは個人的に貴重なので、おまけの星4つ。
今作のお気に入りは、祖父のお通夜でのシーン。死と初めて向き合った真湖がとても良かったです。親しい者が彼岸に渡った時の恐怖とか罪悪感とか、わかる。
あと、鉄人の死にドラマチックな真相みたいなものを付け加えていないのが好みでした。死は理由なく突然訪れ、残された者はただ取り残されるのだ。