公爵令嬢はなにもしない【完全版】
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公爵令嬢はなにもしない【完全版】

砂臥環/仲野小春

葛藤に泣けます

ネタバレ
2023年2月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 主人公は何もしない。あきらめてしまっています。それは過去に受けた傷が深すぎたせい。一見、冷たいように見える彼女の態度は、読み進めていくうちに周りを思い、優しすぎたせいだと印象が変わります。苦しいほどの思いに、胸が痛くなる。

そんな主人公を見守っている父親とヒーロー。ヒーローは実直すぎて、わかりやすく愛しているを伝えられない人。家や王家との問題も大きく、二人は違う鳥籠に閉じ込められた小鳥のようです。

主人公はヒーローのことを誤解し、二人の関係はこじれて、すれ違ってしまいます。

――彼は悪くない。それでも許せない。

ヒーローを突き放したい主人公と、傷ついた主人公に対して何もできなかったことを後悔して、今度こそ、間違えたくないヒーロー。互いに心のうちをさらけ出すシーンは泣きます。

過去はやり直せないし、受けた傷は消えないけど、それでも前に進むことはできる。そんなこと教えてくれる話です。

ラストの「お帰り」の一言に、こんなに感動するとは、読み始めた時には思いませんでした。
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