来世は他人がいい
」のレビュー

来世は他人がいい

小西明日翔

腑に落ちないとこもあるけど好き

ネタバレ
2023年2月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 関西弁で啖呵を切るのはかっこいいけど「お前ら全員私が金出して後処理したるわ 死体なんか溶かしたら終わりじゃ」みたいな経験者が言わないとダサくなるタイプの大言を吉乃に言わせてカッケー扱いは流石に無理がある。腎臓売らないと400万用意できないような子が「私が金出して」じゃねーわと思うし、映画でも観て影響されたのかなー?って感じのキッズっぽさが出てショボくなる。吉乃がショボいと吉乃全肯定の霧島も自動的に格が下がるからやめてほしい。

◇幼い頃から肌で学んできたものはあるだろうし、日常的に暴力を目にしていただろうし、ガチの「溶かしたらしまいじゃ」を聞いたことがあったのかもしれない。でも吉乃自身は家業に関わることなく守られて生きてきた(腎臓の件も吉乃の知らないところで別の思惑が絡んで実際は摘出してないので結局は誰かの掌の上にいる)ただの高校生なわけだから、反社的な所業をまるで当事者のように語るのはサムいっしょ、と思う。で、そのサムい啖呵でキュンとしてる霧島も底が浅く見えるから二重で嫌。

◇でも嫌なところはそれくらい。霧島の感情が伴ってない解離した感じとその反面の吉乃への尽くしっぷりが異常で楽しいし、翔真の不器用な愛情と忠誠心と吉乃に見せる子供っぽさ(霧島とまとめて吉乃に怒られてる時に翔真だけずっと横向いてんの何?かわいすぎか)にはもはや愛しさしかない。
互いに殺したいくらい気に食わないけど「戦力として優秀」、「吉乃のことは死んでも守るだろう」の2点に限って信用してる感じも好き。

◇吉乃も若干自分をモノ扱いするあたりに血筋が見えていいし、殴られようが恐怖に駆られようが易々と泣いたりしないところが好感度高い。腕力では敵わないと分かりつつも自分を奮い立たせて一矢報いたり、どうにかして勝ち筋見つけてやろう感もいい。困難を乗り越えて成長した結果じゃなく元から何かしらが欠落してるっぽい感じが好き。

◇なんだかんだいって関西弁で啖呵切ってる吉乃はかっこいいので、アウトローな実績がなくても説得力が出るような方向でいってほしいな。翔真を外野扱いした霧島に言い返したシーンとか大好き。屈強なアウトローの男たち(と読者)が思いもしない角度から引っ叩かれて「そ、そんな…くそ、筋通ってる…ぐうの音も出ねえ…」みたいになってるのが見たい。
いいねしたユーザ10人
レビューをシェアしよう!