堕ちた軍神皇子は絶望の檻で愛を捧ぐ
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堕ちた軍神皇子は絶望の檻で愛を捧ぐ

桃城猫緒/Ciel

壊れてしまったヒーロー

ネタバレ
2023年3月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ かなりの数のラノベを読んできたけど、過去一泣いて、過去一読むのがつらかったです。どちらかというとヒロインがつらい思いをし、それを救うヒーローの物語が多い中、こちらの作品はずっとヒーローがあまりにもしんどすぎました。
お話はヒーローが牢に入れられ、明日処刑される身であるところからはじまります。死を恐れておらず、ヒロインとまた会えると安堵している穏やかなヒーロー。そこから幼少期のお話になります。こちらのお話現在軸は最初と最後。あとは丁寧に二人の出会いから恋に落ちるまで、ともに成長していく様が描かれています。
ヒーローは人が大好きでみんなから愛される才能のある太陽のような存在。人質としてまだ10歳なのにひとり異国に連れてこられたヒロインを笑顔にさせてあげたくて、国に返してあげたくて強くなる。戦いに勝つことを幼いながらに誓います。
二人が婚約者になるところまではずっと幸せで、微笑ましく読めました。内心ここからなぜ冒頭のシーンに繋がるの…?と思いながら読んでました。そこから突然訪れる不幸の数々。あらすじにヒーローはヒロインの愛しか信じられなくなって?!とありますがそりゃそうです。ヒーロー兄も宮廷官たちもみんなみんなクズ。ヒーロー兄は根っからの悪人ではないけどそれが余計にイライラしました。
徐々に狂い出す歯車、どんどん精神的に追い詰められるヒーロー。
鬼神のように笑い、剣を振るい、敵兵の血を浴びてまた笑い、そして絶叫した。「どうして!!」
このあたりでもう涙ボロボロでした。ヒロインの領地を取り戻す戦いのところはあまりのつらさにずっと号泣しながら読みました。そしてついにヒーローの心が壊れてしまったとき、あまりの出来事に涙が止まらなかった。こんな…人の心がない…救いがなさすぎる…ずっと太陽のようだった誰よりも正しく強いヒーローが壊れてしまった。そこからはもう…壊れたままのヒーローがつらかった。
完全なハッピーエンドというには失うものも心の傷も多すぎて。でもヒーローのしてきたことは間違ってなかった。二人を助けてくれる人たちが数多くいて本当に良かった。
ヒーロー兄も途中からは憎めなくなりました。きっと一生幻聴に囚われ続けて誰も愛せず孤独に生きていったんだと思うので、殺されたあいつよりよっぽどつらい結果だったかと。
間違いなく過去一の作品でした。ヒロインも強くていい子でよかったです。
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