半分あげる【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】
有馬嵐
このレビューはネタバレを含みます▼
母親にウリをさせられている攻め×客から逃げてきた同級生である攻めを見つけ、一緒に逃げることを決める受け
は~……単行本になるのをずっと楽しみにしてました。読みながら何度も泣いてしまいました。漫画的なご都合展開がなく、一度離れてしまう二人はとても現実的というか。受けはずっと心の中に罪悪感を感じていたと思うけど、あれが未成年である二人のできる限界だったなと。逃避行から帰宅して家族と再会して、家に帰ってこれてよかったと思ってしまう受けは何も悪くない、未成年。高校生。当たり前の気持ちだと思います。
攻めの置かれている状況はあまりにもつらいので、正直読んでられるか初めは不安だったんですけど直接的な描写はほとんどないので…ぎりぎり耐えられました。大怪我をして登校してきたときのことは胸糞すぎるので考えたくもありません。
大した関わりもないむしろ苦手だった攻めをいくらあんな状況とはいえ高校生のなけなしの貯金を持って一緒に逃げてあげる受けは本当にいい子だと思います。逃避行の間ずっと繋がれている二人の手がとてもよかった。恋人繋ぎではない、普通の手の繋ぎ方。そんな二人がはじめて恋人繋ぎをした瞬間に思わず涙が出ました。すごく描写が丁寧できれい。
二人が初めてしたときに、二人とも泣いちゃってるのも可愛くて切なくてよかった。きれいな涙。
タイトルの回収も…すごくすごくよかったです。そういうことかあってなりました。切なくて、だけど本当にきれい。
二人が離れてる間の攻めのことが気がかりだったんですけど、受けと出会って好きに生きることを覚えた攻めが、好きに生きるために好きに身体を売った、と思うことだけがせめてもの救いでした。攻め、本当に強い…こんな環境なのにずっと穏やかなにこにこ笑顔なんですよね。
たった3日間の逃避行、だけどそれがずっとつらい環境にいた攻めを救ってくれて。受けにとっても一緒にいてたのしかった3日間で。つらいだけ、罪悪感だけの思い出じゃなくて本当によかった。
二人が再会できて本当によかった。これからは二人でずっと幸せにいてほしい。ずっと半分こ。
攻めと受けもこれでよかったと思います。ふたりとも“はじめて”だし…!(攻めのタチは受けがはじめてです)
優しい絵柄が残酷でつらいのにものすごくきれいなお話にとてもあっていてよかったです。紙でも買おうと思います。