独特の虚構空間に成り立つ関係性の尊さ





2023年4月10日
重い実先生の作品大好きです。でもなんで好きなのか、深く刺さるのか、うまく説明できないでいます。 山本くんの服の畳み方がものすごくきちっとしてるとか、小林くんが温度や物の大きさなど道具を使わなくても数値で把握できるところとか、山本くんが最中に命令形になり口が悪くなるとか、あふれんばかりのディテールが、どれも読み手である自分の予測の範囲を少しだけ超えていて、シュールというほどではないのだけれど、非現実感があって、それが独特の浮遊感を与えてくれているような気がします。 ダイレクトにエモーショナルなのではないのだけど、リアリズムとは異なる描き方で独自空間が作り上げられていて、そのなかでこそ成立するエモーショナルを垣間見せてくれる。それが本当に素晴らしい。作品世界の地平がリアリティとはずれている、そのズレのあり方が、心理部分の尊さを成り立たせているような気がします。他に先生の作品で特徴的だと思うのは、山本くん小林くんが互いに感じていること思っていることが相手に伝えられていないことが多い。つまり読者だけが知っている。すれ違いエピソードなどではなく、後で回収されるわけでもない。その感じが第三者である読者に切なさや見守りたい感覚をもたらしているように思います。どこかの記事で重い実先生作品の魅力を「ギャグ」「エロ」と書いているのを読んだのですが、もちろんそれもあるけれど、そのエロスを支えている文法(先生が独自に作られたものだと思います)こそ紐解かれ、讃えられてほしいと思ったりしています。

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