このレビューはネタバレを含みます▼
行き過ぎた力を持つ魔術士のヒーローと魔物と戦った軍人を癒やす役割の娼婦のヒロインのストーリー。その活躍とは裏腹に、ヒーロー自身は優しく相手を気遣い、時にお人好しで、自分の力が強すぎるために他人に影響を及ぼすことを自覚して、普段は大人しく控えめなヒーローは、上司の命令でヒロインと一夜を過ごします。ヒロインは軍人専用の中級娼婦館で働いており、サバサバした明るい性格で生きるためにこの仕事をしていました。普段はその特殊な歌声で、殺気立ち、興奮した軍人たちの気持ちを落ち着かせる歌姫で、たまに客を取っていました。ヒーローとヒロインの出会いは強烈で、ベッドの上で魔力を解放するシーンから始まりますが、ヒーローが愛情があるような気遣いを見せつつも、ヒロインは仕事と割り切った対応をします。そこから実に細やかな心の機微が描かれます。ヒロインの境遇、ヒーローの秘密、娼婦の仕事、ヒーローの思い、ヒロインの思い。最初は二人で会っても歌を聞くばかりでなかなか二人の関係が進展しませんでしたが、テンポよく飽きずに読めました。後にそのゆったりした日常の時間が二人にとっては大事で、ヒーローの思いが詰まっていたのだと分かります。もうもうめちゃくちゃ純愛です。人生はままならない、何が起こるかわからないとしみじみ考えてしまいますね。何度かここで終わっちゃうのかな?と思うところがありましたが、二人のハッピーエンドをしっかり最後まで書き切ってくれていて良かった。二人らしいやり方を選んだのだとなんだか安心しました。面白かった!