CURE BLOOD
」のレビュー

CURE BLOOD

戸ヶ谷新

ひとりで、静かな場所で読むことを奨めます

ネタバレ
2023年4月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 間違っても通勤通学電車や昼休みに読んではいけません。涙腺枯れ気味の自分が不覚にも目頭が熱くなりました。
突然吸血鬼になってしまった医師忠雪さんと、指導医で、彼に食糧=自分の血を提供し続けることを選んだ十字さんの物語です。その気になれば、なぜ体質が変わってしまったのかとか、どう治そうか奔走するとか、誰かにバレそうになってとか、そういう展開にもできたかもしれませんが、あくまでふたりがどう生きていくかに絞っています。
忠雪さんにとって十字さんは救いであったのは間違いないけど、十字さんにとっても、自分に混じり気なしの信頼を寄せてくれた忠雪さんは、外側だけで評価されがちだったと思われる彼にとっての一筋の光だったんだろう。だからこそ共に生きる決意をしたのかな。
具体的な愛情表現はしてないけど、ふたりの間には確実に愛がありました。それがひしひしと伝わってくるのは作者さんの並外れた力量です。コマの送り方、セリフやモノローグの選び方、表情の描き方、考えに考えたんだろう。素晴らしい作品と作者さんに出会えて本当によかったです。
個人的に好きなエピソードは特典の雨の話。ささいなことなんだけど、ふたりの幸せが垣間見えます。忠雪さんは十字さんがこの世を去ってから自分の命が尽きるまでの間にこのことも思い出していたんだろうなと思うと胸が締め付けられます。
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