さよなら共犯者【単行本版】
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さよなら共犯者【単行本版】

あがた愛

リアルなようで非リアルな愛の逃避行の果て

ネタバレ
2023年4月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ リアルさと非リアルさの絶妙な狭間にあるシリアスなストーリー。互いに本名も知らない成人男性と少年が一緒に逃避行という素っ頓狂なシチュエーションなど、ツッコミ所は諸々あり。しかし主人公2人の心の動きが、作者様の画力も相まってとても細やかに鮮やかに描かれており、読み進むにつれ自然と2人への共感を深めていってしまいました。育った環境への漠然とした反感や、思春期ゆえの怖いもの知らずもあってか、逃避行中も狂おしくヒロセを求める少年はじめ(キス待ち顔のエロさときたら…)。そんなはじめを最初は拒絶するも次第に絆され、理性を必死に保とうとするも、時に崩れてしまう弱さを見せるヒロセ。だとしても、はじめや社会に対して誠実であろうとするヒロセの人間性には好感が持てました。倫理的に微妙な立ち位置を敢えて前面に出した作品なのに2人に共感できたのは、終始ヒロセが大人の節度をもってはじめに対峙するよう努力し、はじめの現在と未来を壊さないことを最優先で考えていたからに他なりません。シリアスな分、大人と未成年のBLが地雷の方や、異世界やオメガバース設定以外ではあくまでリアルを求める方には不向きかも。けれど、フィクションの世界のファンタジーならある程度は許せる方なら、ハラハラしつつも惹きこまれて読んでしまうのではないかと思います。互いに思い合う2人が幸せになることを願わずにはいられない、魅力的な作品でした。
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