家柄故にクラスに馴染めず平凡な日々を送っていた自動車会社の跡取り息子が、怪しいスーツ姿の男と出会い、居心地の良さを覚え、家出同然の逃避行をするお話。
流れるようなストーリー、ミステリアスな展開、お互いの立場や人物像に触れそうで触れない緻密な会話、そこから生まれる信頼と愛情を丁寧に描いた素晴らしい作品です。短い間の出来事をゆったりとした時間軸で表現し、はじめ視点、ヒロセ視点、過去や現在の人間関係などから多面的に描いているので、それぞれの思いや考えがとても良く伝わりました。
そして最大の魅力ははじめが可愛すぎることです。裕福な家柄こその孤独を持ちつつも、とても素直で真っ直ぐに育ち、自分の気持ちをひたむきにぶつけてくる大胆さ。男の人を好きだということに対して何の疑問も抱かない純粋すぎるその気持ちは、時には読者が恥ずかしくなるくらいストレートで、ヒロセの心も自然と彼に惹かれていきます。この二人の心境の変化がとても自然体で、欲情していく様子がピュアでありつつとてもえちえちで、最後まで一気に読んでしまう程夢中になりました。はじめが真面目な顔でえちえちなことを考えていたり、誘惑してくるのがたまらなく好きです。
映画を見たような読後感のいいお話です。