このレビューはネタバレを含みます▼
以前、単行本で読んだものの今は手元にありません。今回、再度読んでみてどうして手放したのかが分かりました。
「ファーストコンタクト」を読むと、脇坂祐一は初めて会った時から深瀬心に心を惹かれ、暫くして自分から誘いにいっています。相思相愛で付き合っている恋人の前から突然姿を消して一切の連絡をしないというのは、職業上の守秘義務があったとはいえ、人として誠実ではありません。
その上、野上警視と共にはかりごとをして、公安の仕事を手伝わせています。シャティーラでの任務が首尾よくいったのは深瀬の働きがあったからです。彼抜きではなし得なかった任務と言ってもいいでしょう。また、任務の詳細を言わなかったことで深瀬を危機に陥れています。
そして、シャティーラに置き去りにして先に帰国しています。何故同じ飛行機の便に乗るという考えに至らないのでしょうか。「夜間飛行」は独りでは淋しいのです。
脇坂が有能なのであれば、SPとしての任務の際に部下が死に自分も重傷を負うというのはあり得ません。犯人はプロではなかったはずです。警護のSPが一般人に負けるとは思えません。
「存在証明」でも、仕事とは言え女性とデートをして、深瀬を妬かせている脇坂です。深瀬の心情に疎いところが間間あります。
一点白けたところがあります。深瀬が脇坂を「あんた」と呼んだところです。深瀬の言葉として違和感があります。彼の人物像とは対極にある言葉です。細かいところまで気配りを忘れてはならないということが良く分かります。