このレビューはネタバレを含みます▼
ピアニストの絹川と暴力団幹部・深見の物語――。
好きすぎて、ずっとレビューできなかった作品。
初出は2005年。絵に古さは感じるけど、この作品、とんでもなく面白いです。
すっきりとした絵、先の読めないストーリー…最後まで一気読み。そして読後、ものすごい余韻が残る。
この作品に出てくる、暴力団幹部・深見という男――
自分が今まで読んだBL作品の中で、一番好きな受け様です。
彼の業、彼の痛み、彼の本質…
読み終わって数年たつけど、今でも彼のことをふと思い出す。
【以下ネタバレ注意】
何年経っても忘れられないのは、彼の心の複雑さとやるせなさ。
辛い過去により男に抱かれることを心底嫌悪してるのに、体が男を求めてしまう自分の性。
男に抱かれながら男を憎み、屈辱と憎悪を抱きながら快楽に堕ちてゆく。
憎い、殺したい、でも欲しくて体が疼く――
ジレンマに引き裂かれ、彼の心は壊れてゆく。
どうかみんな幸せに…と。読みながら何度も祈った。
胸が苦しくなるようなハッピーエンド。
ずっと忘れていてほしい。
ただただ彼が明るく笑っていてほしいと。工藤と共に私も願う。
思い出すたびに鈍い痛みが胸に広がるけれど、その痛みも含め、大好きな作品。