最後の一滴 「一滴、もしくはたくさん」番外編【電子限定版】
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最後の一滴 「一滴、もしくはたくさん」番外編【電子限定版】

沙野風結子/湖水きよ

イラストレーターが漫画家の究極の番外編

ネタバレ
2023年5月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 湖水きよ先生がイラストを描いている小説は希少価値があります。過去作品もどれも人目を惹く素敵なものばかりでした。番外編を漫画で読むことが出来るのは、イラストレーターが漫画家である時だけの贅沢仕様です。
この作品を読み進むうちに、画家の暗【ツグム】氏が描いた保嵩の絵を見た瞬間に涙が出てきました。まだ若い画家が筆を折らなければならないことを知ってどれだけの絶望のどん底に落ちたか、想像に難くありません。
けれども、彼は光を失った後も絵を描き続けると感じられました。自分の記憶と心の中にある物や風景や心象を下絵に描き、助手に細かい色の指定をして、色を重ねて作品を仕上げることが必ずやできるはずです。日本には、古来より四季折々の自然の色合いや衣装の染色の色についての繊細な色の名称があります。淡水色(うすみずいろ)、黄浅緑(きあさみどり)、信楽茶(しがらきちゃ)、天青(てんせい)、勿忘草色(わすれなぐさいろ)など、名前を口にするだけで色が脳裏に、目の前に浮かんできます。
画家の暗【ツグム】氏の作風が保嵩と朔眞(水師と水人)の絵を境にして、より人の心を打つものに変遷を遂げるのは間違いないでしょう。
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