このレビューはネタバレを含みます▼
ほんといい、よすぎる。舞台はシアトルとなんだかよくわからない島。冒頭に地図が掲載されていて、位置関係はなんとなく把握できる。シアトルって雨の多い街というアメリカのドラマからのイメージしかないけれど、シアトルあたりが舞台というのもなんかいい。FBI捜査官だった主人公エリオット(受け)は、事件で負傷し辞職、同僚で恋人のような関係にあったタッカーとはそのせいで別れてしまい、教職につくもタッカーとの日々を忘れられずもんもんとする。ほんとこの二人の関係性、やり取りが好きすぎる。忘れたいけど忘れられない恋の残像、熱、感触、自分が求めているものを本当はわかっているのに、その通りには簡単に動けない。考えたくないのに、ふとしたときに思い出してしまうタッカーの熱さ、大げさな表現はないのにエリオットやタッカーの感情のすべてがありありと目の前に広がる。エリオットとタッカーが久しぶりに再会したときの二人の間の緊張感とか、ほんと好き。別れてもお互い意識しまくっていて、手をのばしたいのにお互い躊躇してる、でも結局その手をつかまずにはおれんのだよ、こういうのホント好き。エリオットとタッカーの恋愛事情にどうしても目がいってしまったが、メインにあるのはサスペンス。サスペンスの中に、うまい具合に二人の恋愛的緊張感がからめられている。そして二人が仕事大好きなとこもほんといい。仕事に生活の全部を注ぎ込んでしまってるような人たちの恋愛話大好き。エロはたくさんはないけれどちゃんとあって過剰にあえがない。キスシーンも熱さと必死さが伝わってきてよかった。全編通して静かな熱情と緊張感がある。緊張感はあるけど暗いわけではない。葛藤するけどうじうじしているのとは違う。愛はあるけど甘すぎない。お互いなくてはならない相手だけど、たぶん別れても、痛い未練を胸のすみっこに抱えながらしっかりきっちり仕事して、なんだかんだ一人でもちゃんと立っていられる二人だと想像させてくれるとこもいい。
なお、知らない食べ物や道具がけっこう出てきて自分の無知を改めて思い知る。勉強になります。日産はニッサンと書きます。
時おり文章であれっと思うところがなきにしもあらずだったし、純粋にサスペンスとしてどこまでおもしろいかと言われると言葉につまるけれど、大好きな二人なので大目にみて★5。続編はやく読みたい。